「何もしない」時間が、こんなにも重くて苦しいなんて思ってもいませんでした。
カレンダーの真っ白なページが目に刺さる感じ。予定がないって望んでいたはずなのに、いざ本当に何もない日々が続くと、まるで自分が社会の地図から消えてしまったような、不安が押し寄せてきます。
今回は、私が実際に経験したどん底のような日々と、そこからどうやって這い上がったか、その泥臭い記録を素直に書いてみようと思います。もし今、暗い部屋でこの記事を読んでいるなら、「自分だけじゃないんだ」と少しだけ肩の力を抜いてみてほしいです。
天井の木目を数えて過ごした数週間
私のどん底は、ある秋の午後から始まりました。
それまでは地域の役員の仕事や孫の世話、趣味のサークルで手帳がびっしり埋まっていて、「忙しいのはいいこと」と言い聞かせながら、エンジン全開で動き回っていました。
でもある日、ふと糸がぷつんと切れたんです。
朝、目が覚めた瞬間に「もう今日はダメだ」と直感しました。体はどこも悪くないし、熱もないのに、布団を跳ね除ける力さえ心に残っていない。
結局、その日は一日中、天井の木目を数えて過ごしました。
「あの節は人の顔みたいだな」「こっちの線は川の流れっぽい」そんなことを考えているうちに日が傾き、部屋は薄暗くなっていく。ご飯を作る気力もなくて、冷蔵庫の冷えた残り物をなんとか口に運びました。その味のなさは今でも忘れられません。
そんな日が一日、二日…と続いて、気がつけば二週間経っていました。
動けなくなる人に隠れた共通点
動けない期間、自分と嫌というほど向き合いました。そこで分かったのは、「何もしない」状況になってしまう人って決して「怠け者」じゃないということ。むしろ正反対でした。
「完璧な終わり」を過剰に求めてしまう人
「やるならちゃんと成果を出さなきゃ」「人から感謝される形にしなきゃ」と、ゴールのハードルが高すぎて、足がすくんで一歩踏み出せなくなってしまう。
「心の貯金」がカラになった人
家族や会社のために長年エネルギーを注ぎ続けて、自分に使う心のガソリンが空っぽだと気づかずにエンストした状態。
「変化を察知するアンテナが過敏すぎる人」
季節の変わり目やニュースの不穏な空気、近所のやり取りなど、小さなノイズを吸い込みすぎて心がいっぱいになり、新しい情報を受け入れられなくなる。
まさに私のことでした。鏡を見るたび、「老けたな」「何も生み出してないな」と自分に毒を吐いていた。自分を責めるこの行為が一番体力を消耗するんだと、後になって気づきました。
抜け出すきっかけは、絶望的に小さなことだった
同じような泥沼から抜け出すのに、巷の「ポジティブなアドバイス」は全然役に立ちませんでした。「朝日を浴びましょう」「運動しましょう」「新しい趣味を見つけましょう」なんてキラキラした言葉は、動けない私にはただの重荷でしかなかった。
どうでもいいことがきっかけに
・玄関の靴を一足だけ揃えた
ある午後、どうしてもトイレに行きたくて布団から出たら、玄関の靴がぐちゃぐちゃに脱ぎ散らかっているのに気づきました。その時、「これは嫌だ」と思い、這いつくばるようにして自分の靴だけをそろえました。所要時間はたった5秒。でも、その瞬間「自分の意志で世界をほんの少し動かせた」という小さいけれど確かな手応えを感じたんです。
・「お湯を沸かす音」にじっと耳を傾けた
その次の日は、飲むためじゃなく、ただ沸くお湯のシュンシュンという音を聞きたくてお湯を沸かしました。
静まり返った部屋にその音が響いて、「まだここにいていいんだよ」って言ってくれている気がして、少し泣きそうになりました。
「散歩」という、小さなリハビリ
少しずつ動けるようになり始めた頃、私が一番怖かったのは「外の世界」でした。近所の人に会って何を話せばいいのか、楽しそうに歩く人を見て惨めにならないか。
でもある夕暮れ、ゴミ出しのついでに10メートルだけ歩いてみました。
すると、頬にあたる風が予想以上に冷たくて、心地よかった。
「ああ、今は秋なんだな」と、頭じゃなく肌で季節を感じた瞬間、止まっていた時計の針がチクタク動き出したように感じました。
そこから毎日、目的地のない散歩が始まりました。
道端のマンホールのデザインをじっと見たり、
よその庭の知らない花の色を覚えたり、
コンビニの自動ドアのチャイムを聞きに行ったり。
「健康のため」とか「歩数を稼ぐため」なんて目的を全部捨てたら、散歩は「世界と自分をつなぎ直す儀式」に変わりました。
今、どん底にいるあなたへ
もし今、あなたが「何もしたくない」という闇の中にいるなら、無理に光を探そうとしなくていいです。
「何もしないこと」は罪じゃありません。むしろ、長い人生で擦り減った心と体を修理に出している期間なんだと思います。
車だって定期的に車検に出して部品を交換するでしょ?あなたの心も今、大きなメンテナンス中なだけなんです。
焦ってエンジンを吹かす必要はありません。
まずは今日、呼吸している自分を「よくやってる」と認めてあげてください。
カーテンが少しでも開けられたら、それは大きな勝利です。
冷たい水を一杯飲めたら、それは素晴らしい一歩です。
明日の予定が真っ白でもいい。
いつかふと「あの角の先ってどうなってるんだろう」という小さな好奇心が芽生えるその日まで、あなたはあなたのペースで静かに休んでていいんです。
この文章をここまで読めた時点で、あなたはもう十分すぎるくらい動いています。

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