「60代、散歩が最強のソリューション」。 なんだか小難しいビジネス用語みたいですが、還暦を過ぎて数年、今の私が行き着いた結論がこれなんです。
今日は、なぜ私がこれほどまでに「歩くこと」に心酔しているのか。そして、散歩が私の人生の何を変えてくれたのか、包み隠さずお話ししようと思います。
始まりは、鏡の中の「しおれた自分」だった
正直に言いましょう。60代に入ったばかりの頃の私は、なんだか自分が「賞味期限切れ」になったような気がしてなりませんでした。
仕事の第一線からは退き、子供たちも独立。ぽっかり空いた時間を埋めるのは、テレビのニュース番組と、スマホで流れてくる「健康寿命」だの「老後資金」だのといった、不安を煽るような情報の数々。 そんな生活を続けていると、不思議なことに体まで重くなってくるんです。朝起きてもどこか体がギシギシ鳴るような感覚。鏡を見れば、表情までどんよりと曇っていました。
「このままじゃ、いかんな」
そう思って、とりあえずクローゼットの奥に眠っていた古いスニーカーを引っ張り出したのが、私の「散歩生活」の始まりでした。
まずは一歩
よく「散歩は健康にいい」と言われますが、実際に毎日歩き始めて気づいたのは、数値的な健康以上に「自分の体を自分でメンテナンスしている実感」が手に入ることの尊さです。
最初は15分歩くだけで息が上がっていました。「自分はこんなに体力が落ちていたのか」とショックを受けたものです。でも、1週間、2週間と続けるうちに、面白いことが起き始めました。
まず、膝の「カクッ」とする感覚が減ったこと。そして、何より食事が美味しくなった。 歩いた後の朝ごはんで食べる、なんてことない食パンが、どうしてあんなに香ばしくて甘いのか。これは歩いた人だけに与えられる、最高のご褒美だと思っています。
60代の体は、放っておけば錆びていく機械のようなものです。でも、散歩という名の「油」を差してやるだけで、驚くほど軽やかに動き出します。高価なサプリメントやジムの会費を払う前に、まずは玄関の扉を開ける。これこそが、コスパ最強の健康法だと断言できます。
モヤモヤをゴミ箱に捨てる時間
散歩が最強である本当の理由は、実は体よりも心への効能にあります。
人間、じっとしていると、ろくなことを考えません。「あの時、あんなこと言わなきゃよかった」という過去の反省や、「これから先、病気になったらどうしよう」という未来の不安。 家の中にいると、そんな思考のノイズが頭の中でグルグルと渦巻いてしまいます。
ところが、外に出てリズムよく足を動かしていると、不思議と脳が「整理整頓」モードに切り替わるんです。 私の場合は、だいたい歩き始めて10分を過ぎたあたり。視界に入ってくる景色が、脳内のネガティブな思考を少しずつ追い出してくれます。
「あ、あそこの家の庭、今年は紫陽花が見事だな」 「この路地、こんなところに新しいパン屋ができてる」
そんな些細な発見に意識が向くうちに、抱えていた悩みなんて「まあ、なんとかなるか」と思えてくる。 散歩は、脳内のゴミを路傍に捨てていく作業に似ています。帰り道、自宅の玄関が見える頃には、心は驚くほど軽くなっています。
五感を取り戻す贅沢
60代からの散歩において、私が一番大切にしているのが目的を持たないことです。
現役時代は、常に目的地があり、到着時間が決まっていて、最短ルートを効率よく移動することが正義でした。でも、今の私たちには「時間」という最大の贅沢があります。
だから私は、あえて寄り道をします。 鳥の声が聞こえれば立ち止まり、空の色が綺麗ならスマホを取り出して写真を撮る。風に乗って香ってくるキンモクセイの香りに、秋の訪れを五感で受け止める。
この「今、この瞬間を味わう」という感覚。 忙しく働いていた頃には忘れていた、人間らしい感性が、散歩を通じて少しずつ戻ってきている気がします。 「今日は空が青いから、それだけで100点満点」。 そう思える感性こそが、これからの人生を豊かにしてくれる武器になるはずです。
社会との「ゆるい繋がり」
もう一つ、散歩の隠れたメリットをお伝えしましょう。それは、社会との「ほどよい距離感」です。
定年後、一番怖いのは社会からの孤立です。かといって、新しいコミュニティに飛び込むのは、気疲れもするし億劫なもの。 でも、散歩なら「ゆるい繋がり」が持てます。
毎朝すれ違う犬の散歩中のおじさんと、軽く会釈を交わす。 公園のベンチで休んでいる時に、近所の子供たちが元気に走り回る姿を眺める。 これだけでいいんです。深い関わりはなくても、「自分もこの世界の一部である」と感じられること。この安心感が、孤独感をそっと和らげてくれます。
さあ、一歩踏み出しませんか?
ここまで読んでくださったあなたへ。
もし今、何となく体が重かったり、心が晴れなかったりするのなら。 あるいは、何か新しいことを始めたいけれど、勇気が出ないのなら。 どうか、一番履き慣れた靴を履いて、外に出てみてください。
目的地なんてなくていいんです。 コンビニまででも、隣のブロックまででも。 「散歩が最強のソリューション」という私の言葉が本当かどうか、あなたの足で確かめてみてほしいのです。
一歩、また一歩と足を踏み出すたびに、あなたの世界は少しずつ、確実に明るい方へと動き出します。
明日も晴れるといいですね。 私は明日も、お気に入りの青いスニーカーを履いて、新しい「発見」を探しに行くつもりです


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