「親の介護は、近くに住んでいる子どもがやるもの。」
どこかで、そんな思い込みがありました。
私は関西に住んでいて、実家は九州。新幹線で約4時間。母が75歳を過ぎた頃から、電話の声が少しずつ弱くなっていきました。
最初は気のせいだと思っていました。
でもある日、「昨日、転んでね」と軽く言われたとき、不安になったのを覚えています。
それでも、すぐに地元へ戻る決断はできませんでした。仕事もあるし、生活もある。正直に言うと、収入が止まる不安のほうが大きかった。
そこで選んだのが「遠距離介護」という形でした。
「施設に入るタイミングはいつ?一人暮らしとの分かれ目」はこちら
月1回の帰省から始めた
最初に決めたのは、月1回必ず帰ること。
交通費は往復で約3万円。安くはありません。でも「何もしない罪悪感」に比べれば、必要経費だと思うようにしました。
帰るたびに冷蔵庫の中をチェックし、通院の付き添いをし、介護保険の書類を一緒に確認する。それだけでも母の安心感は違ったようです。
ただ、最初はうまくいきませんでした。
電話で様子を聞いても「大丈夫」の一点張り。
本当は大丈夫じゃないのに。
あるとき、近所の方から「最近ゴミ出しの日を間違えているよ」と教えてもらい、やっと現実を直視しました。
遠距離だと、小さな変化に気づきにくい。
これが一番の怖さです。
地域包括支援センターに救われた
自分ひとりで抱えるのは無理だと感じ、実家のある市の地域包括支援センターに電話しました。
最初は正直、少し緊張しました。「遠くに住んでいるくせに」と思われるのではないか、と。
でも、担当の方はとても淡々としていて、「遠距離の方も多いですよ」と言ってくれました。その一言で肩の力が抜けたのを覚えています。
その後、要支援認定を受け、週1回のデイサービスを利用することに。
費用は月約8,000円ほど。
母は最初嫌がりましたが、今では「友達ができた」と言っています。
遠距離介護は、家族だけで頑張るものではない。
それを知ったのは大きな転機でした。
正直、罪悪感は消えない
ここが一番大事な話です。
遠くに住んでいると、どうしても「自分は逃げているのでは」と思う瞬間があります。
親が体調を崩したと連絡が来た夜、すぐに駆けつけられない現実。
そのたびに、心がざわつきます。
でも、あるとき母に言われました。
「あなたが無理して帰ってきても、私が心配するだけよ。」
この言葉で、少し考え方が変わりました。
近くにいる=正解
遠くにいる=不正解
そんな単純な話ではないのだと思いました。
遠距離介護を選ぶなら、決めておいたほうがいいこと
経験してわかったのは、曖昧にしないことが大事だということです。
・月何回帰るのか
・緊急時はどう動くのか
・お金はいくらまで出せるのか
私はノートに書き出しました。
感情だけで動くと、必ず疲れます。
特にお金の問題は現実的です。
交通費、介護サービス費、将来の施設入居費は避けて通れません。
「そのうち考えよう」は、一番危険でした。
遠距離介護は逃げではない
介護には正解がありません。
同居していても後悔は残るし、遠距離でも不安は消えない。
大事なのは、自分の生活を壊さない形を探すことだと感じています。
私は今も月1回帰省しています。
正直、楽ではありません。
でも、「できる範囲で関わる」と決めたことで、気持ちは少し安定しました。
もし今、遠距離介護に迷っているなら。
すぐに仕事を辞める決断をしなくても大丈夫です。
まずは地域の窓口に電話するだけでも安心感は大きく違います。
全部背負わなくていいんです。
遠距離介護は、冷たい選択ではない。
現実と向き合った結果の、ひとつの形だと私は思っています。


コメント